2011/04/23

逗子の家

逗子の家は、南隣地が農園でその向こうに桜山が見えるので、その眺めを楽しむために2階に居間を持ってきた。1階に寝室・水廻り、2階に居間という逆転プランになっている。
逆転プランはこれまでに何度も設計してきているが、1階に寝室というのは地面に近いところで寝るという意味で本能的に落ち着いて寝られるし、構造的にも1階に小部屋があって壁が多い方が耐震的に有利で、且つ2階に開放的な空間を無理せず作ることができるという意味では理にかなっている。


また2階居間の場合、上部が切妻屋根の小屋裏なので居間の部分を丸天井として天井を高くし、台所は天井を低くして小屋裏空間を物置として利用している。


仕上げは床は赤松縁甲板15tワトコオイルワックス塗り、壁はしっくい塗り、天井は石膏ボード9.5tAEP(水性ペンキ)塗り。中央の開口部は2本引きのガラス戸、網戸、障子が左の壁に引き込まれる。床から30cm上げて少し腰掛けれるようになっている。


デッキテラスでは梅の木を間近に楽しめる関係を作っている。
デッキ床、手摺りともに米杉(レッドシダー)という腐りにくい樹種を使用している。


階段左にはエアコン、電話・FAX、インターフォン、ステレオミニコンポを収納する。SさんはTVを観ないという主義であるが、音楽を楽しむために天井埋込のスピーカーを設置している。
階段右はソーラーれんの立下りダクトスペースである。ガラリ部分にはソーラーで集熱した暖気を2階に直接吹き出すことのできるダンパーボックスを設置した。


開口部中央には構造的に柱が必要であったが、丸柱にしたことであまり目立たない。


 居間の隅にちょっとした飾り棚を設けたところ、Sさんがウサギの親子の人形を飾っていた。


台所からもデッキに出られるようになっていて、ゴミなどを一時的にデッキに出しておくなどサービスヤード的に使うこともできる。シンク台のカウンターは今回はご要望で人工大理石を使っている。


背面は配膳台と食器棚。左の格子の引出しは炊飯器用である。
台所から納戸につながり、その向こうはスタディスペースである。


スタディスペースは北側の柔らかい採光のもと、3.6mの机を造り付けた。壁の茶色い部分はコルクシートが張ってあり、画びょうでいろいろ貼り付けることができる。


スタディから障子を開けると階段を挟んで丁度よい距離で居間につながる。



障子窓から階段を見下ろす。


スタディから畳コーナーにつながっている。


畳コーナーは居間とつながっていて丸天井の延長が来ている。道路斜線の関係で南側よりも天井が低く、2m弱としている。床座としては落ち着けるちょうどよい高さになった。


正面の障子は戸袋なしの片引きだが、吊り戸にしているので敷居がなく壁がスッキリした。


そして居間に戻ってきた。2階は階段を囲んで居間→食堂→台所→納戸→スタディ→畳コーナー→居間とぐるりと回れるプランになっているのである。回れるプランもこれまでに何度も設計してきているが、次の部屋、次の部屋とつながっているということが実際の面積よりも心理的に広く感じられてよいものだ。

2011/04/22

逗子の家

逗子の家の続き。
住まい手のSさんからのご要望で、玄関から直接洗面所・浴室にアクセスできるようにしている。
壁・天井は飯能の岡部木材のサワラ縁甲板15t撥水剤塗りとした。サワラは水に強く水廻りにはよく用いる。浴室は建具の枠材もサワラである。

トイレは洗面所とは別室にしたいという意見が一般的だと思うが、洗面所と一緒にすると広々と使えて気持ちいいし、全体の面積も節約できるので、この家では洗面所と一体としている。将来の老後のことを考えても広くて介護しやすいというメリットがある。(もちろんご要望により別室でも設計しています。)

洗面所天井には川口技研のホスクリーンという取り外しのできる物干金物を設置し、天気の悪い日は室内に物干ができるようにしている。



大工さんに長いタオル掛けを2段作ってもらい、たっぷりタオルが掛けられるようにしている。
浴室の腰壁と床は安価で滑りにくいポリコンモザイクタイル貼りとしている。



浴室から濡れ縁、そして庭につながっている。
庭はプランタゴの田瀬さんのデザインで昨年完成しているが、まだ完成してから行っていないので写真は竣工時の状態である。近々伺う予定なのでまたレポートしたい。
庭の視界から外れたところに外流しと雨水利用のタンクを設置した。雨水利用のタンクは常陸太田の家と同様の英国ハーコスター製のものを使った。


庭にもともとあった梅の木が美しい。


濡れ縁には布団干し用の手摺りを設けている。


子供室は約10帖ある。床は赤松縁甲板15tワトコオイルワックス塗り、壁は石膏ボード12.5tAEP(水性ペンキ)塗り、天井はラワンベニヤ5.5t目透貼りワトコオイル塗りである。2人の女の子のためのスペースとピアノコーナーであるが、部屋に扉や仕切りを設けていないので、しばらくは家具などで仕切りながら広々と使い、必要になったら将来いつでも間仕切りを取り付ければよいと考えている。


主寝室の仕上げは子供室と同じである。
手持ちの家具に合わせたクローゼットと階段下の空間を利用した収納を設けた。
この部屋にはソーラーれんの立下りダクトが露出している。ダクトは紙製なので太陽で集熱した暖気がダクト自体から少し放熱し、部屋を暖める。




階段はコンパクトに一坪に納めている。段板はJパネルという杉板を三層に貼りあわせた板を使用している。踊り場付近の天井が高くなりすぎるので、天井に段をつけて和らげている。2階のスタディコーナーと障子でつながっていて気配が伝わるよう配慮した。天井の段の障子寄りの1段はスタディ側で本棚に利用している。

2011/04/21

大阪出張

昨日は大阪出張であった。
大阪は15年前に石田事務所時代に島本町の家を担当したときに結構行っているが、島本町は京都からのアクセスになるので、市街地には確認申請で行っただけであった。そのとき以来だから15年ぶりとなる。

今回も確認申請の作業のため、地下鉄や南海線いくつも乗り換えて役所周りである。
南海線の車内放送が「みなさま、まもなく...」と始まるのに違和感を覚える。
移動中の車窓から見える風景に心がときめく。

羽根建築工房の羽根さんが東天下茶屋で建て方をおこなっているので現場で打ち合わせしたいという。天王寺から阪堺線という路面電車に乗った。大阪にこれほどレトロなものが残っていることに少なからず驚いた。

内装の黄緑色のペンキが塗ってある部分は木製である。窓は私がいつも設計しているような作り物の木製建具である。しかもガラス戸は下に引き込んで開けるようになっている。ガラス戸の内側にはガラリ戸が引き込まれていて、まぶしいときは下から上に持ち上げて引き出すようになっている。他にも真鍮の金物、ベンチの手掛けのカーブが工業製品ではなく建築の職人の技が感じられて魅力的である。


東天下茶屋駅に到着。羽根さんが「てんがちゃや」と言っていたが、「てんかぢゃや」ではないのかなと思って調べたところ、やはり「てんがちゃや」が正解であった。



東天下茶屋の情緒のある細い路地に面した現場、広渡建築設計事務所の仕事とのこと。
丁度広渡さんご夫妻が来られて少しだけ挨拶させていただいた。


その後住吉大社近くでランチ。そこらじゅうにお好み焼き屋があるので適当に入ってみた。
ちょっとボリュームが物足りなかったが、大阪の下町の味を堪能。


食後の散歩。20年前の学生時代にも見に来たことがあり(もちろん外観のみ)、なんとなく場所は覚えていた。通りの突き当たりは住吉大社である。


午後も忙しく動いて仕事が一段落。帰り際に心斎橋を少しだけ散歩して帰ることにした。
戎橋に着くと何か印象が違う。あ、キリンプラザがない。H&Mに建て変わっていたのだ。
高松伸設計のキリンプラザは好きな建築というわけではなかったが、学生時代に新建築誌で見た印象に残る建築の一つであり、わずか20年で壊されてしまったというのはちょっと残念である。

2011/04/19

逗子の家

逗子の家は、海にも山にも近い敷地でカヌーや山登りを楽しむ4人家族のためのシンプルかつコンパクトな家である。
施工は小田原の安池建設工業


外壁はジョリパット校倉、建具はすべて作り物の木製建具である。


敷地の南側は農園をはさんで田越川に面して開けている。
屋根のガラスは空気集熱式床暖房「ソーラーれん」の集熱ガラスである。


玄関ポーチは4台の自転車が置けるスペースを確保した。
ポーチ床は赤レンガ羊かん敷き。羊かんレンガとは通常のレンガのサイズを半分にしたものだ。
玄関扉は米松縁甲板張り、レバーハンドルは堀商店のものを使用している。


北側の玄関だが、扉横のFIXが効いて結構明るい。
住まい手のSさん家族はアウトドア好きで、遊びの道具がたっぷり収納できる玄関となっている。

2011/04/14

ハムレーくんで生ハムづくり2011

仕事がドタバタしていて生ハムのスライスに取り掛かれなかったので、ブロックで真空パックしておいたが、先日時間が取れてスライスと真空パックを完了した。


左上がパナソニックの真空パック機、右がイタリア製のスライサーである。


スライスの作業は楽しいが、刃が鋭利なので油断しないよう慎重におこなう。


少しだけ試食してみたが、なかなかの出来ばえである。やはり昨年よりも寒かったことで薫煙の染み込みかたがいい感じになったのではないかと推測している。

ところで食べ方は、レタスと一緒に包んで食べるのがいいと思うが、まことさん一押しの食べ方は春菊を生のまま生ハムと食べるとおいしいよ!とのことである。あるいは薄いパンにバターとカラシを塗って生ハムと生の春菊をはさんで食べるのもまこと流のおすすめサンドイッチである。

私のおすすめはシングルモルトのおつまみとしていただくのが最高の組合せだと思っている。
シングルモルトは多くの銘柄があるが、中でもおすすめなのが「ボウモア」である。
ボウモアはそれ自体にも少し薫煙の香りがあって、生ハムとの相性はバッチリである。

長々とレポートを書いてきたが、このブログを読んでくださっている方で、今回私の作った生ハムを食べてみたいという方がいましたら、クール宅急便の着払い(¥850ぐらい)でよろしければお分けしますので、ここにメールをください。

2011/04/07

織工おきぬ+原西アトリエ2011 春夏の服展


4月14日(木)~19日(火)
am.11:00~pm.6:30(最終日5:00まで)
神楽坂 アート・スペース K
新宿区神楽坂2-11
℡03-3266-1137

私が事務所を間借りしている奥村設計所の同じ敷地内で、奥村先生の娘さんの吉田まきさんが「織工おきぬ」として服を作っています。まきさんから春夏の服展の案内をいただきました。
ちなみに原西アトリエさんは水戸で奥村設計所の設計したOMソーラーのアトリエです。新建工舎設計さんがブログで紹介しています。→Hさんのアトリエ

~晴れても雨でも風の日も「今日はいいお天気」~

という副題がとてもいい感じだなと思いました。
先日OMのシンポジウムでレミングハウス・中村好文さんが自身の山荘「LemmHut」での生活について語られたとき、「いい天気」という言葉が「晴れ」だけを意味するのではなく、雨の日も風の日も「いい天気」と思えるようになったと言っていたのを思い出した。