2017/04/13

月見台のある家

月見台につながるリビング・ダイニング・キッチンのブロックは、おおらかな緩い弧を描く天井のワンルームの空間にしました。
天井はラワンベニヤ5.5mm目透かし張りで無塗装の張りっ放し、壁は漆喰塗りっ放し、床は赤松縁甲板12mmというローコスト仕様です。



月見台につながる掃き出し窓は、ガラス戸、網戸、障子とも壁に引き込まれ、スモモ畑の景色を取り込んでいます。


障子を閉めると空間の雰囲気ががらっと変わります。


ダイニングコーナーは北側のブドウ畑に大きく開きました。窓上部の下がり壁にエアコンが付いていますが、簡単に取り外せる目隠し板を設けたのでほとんど存在が気になりません。


キッチンはリクシルのシステムキッチンを使用しています。奥様のご要望でシンク前立上がりのないフルオープンのタイプです。コンロ横の壁には油の飛び跳ねでしっくいの壁を汚さないよう耐熱ガラススクリーンを少し浮かせて設置しました。
キッチンの奥には茶室や水屋に通じる扉と、北側のサービスヤードに出られる勝手口を付けてあります。


真ん中の白いダクトはそよ風の立ち下がりダクトです。ダクト下の箱は切替吹出し口。これを付けることによって、屋根で集熱した温かい風を床下に吹出して基礎のコンクリートに蓄熱させるか、直接室内に吹出すかを手動で切り替えることが出来ます。
切替吹出し口は金属製の無骨なものなので、カバーをデザインして大工さんに作ってもらいました。
立ち下がりダクトは隠す場合もありますが、今回は見せるデザインにしました。
冬場の集熱しているときはこのダクトの下が家中で一番温かい場所になり、立ち下がりダクト自体も多少温かくなります。切替吹出し口カバーをデザインすることで薪ストーブや暖炉にも似た存在感が出て、ワンルームの大きな空間のなかで求心的な役割を果たしています。



徳田英和
hidekazu.tokuda@gmail.com
徳田英和設計事務所
171-0031東京都豊島区目白3-8-6吉村ギャラリー2F
TEL 03-3954-6161
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月見台のある家

この家の平面は単純な長方形ですが、部屋の用途に応じた3つのブロックに分けて、奥に行くにしたがって天井の形状により空間に変化をつけています。
玄関・茶室のブロックは低いフラットな天井でしたが、一番奥の寝室のブロックは斜めの天井になっています。




寝室の片隅には書斎コーナーを設け、背の低い本棚をパーティションに居場所を分けています。



廊下には開閉式の天窓を設け、寝室入口上部の欄間障子を開けると風が流れるようにしました。


予算が限られていたので、何もかもオーダーメイドではできなかったのですが、浴室をユニットバスにするかわりに、洗面台と洗濯収納はこだわって造作家具で製作しました。
造作家具は扉や引出しが多いとコストが高くなります。そこで、デザインのいい既製品のカゴなどをうまく利用することを前提に、扉と引出しのないデザインにしました。
扉や引出しがないと湿気の心配が少なくなるというメリットもあります。
洗面台はカウンターをモザイクタイル張りにして、実験用の流しを埋込んでいます。




徳田英和
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月見台のある家

この家には茶室を設けています。
奥様が茶道と着物の着付けの先生をされていて、その教室としての茶室です。
玄関は教室の入口も兼ねているので格子の引戸としました。


ガラス戸のほかに網戸も入っており、左側の嵌め殺し部分に引き込みます。


奥の小さな扉はクロークになっています。


ポーチと玄関の床は豆砂利洗い出し。 玄関に入って正面が住居部分ヘの扉、右が茶室へ行く畳廊下になっています。


 玄関は茶室の延長で聚落(じゅらく)塗りの左官壁。一部凹ませてニッチを作りました。季節の飾りものを愉しむ場所。


こちらが茶室。教室用の茶室ということで、なるべくローコストで簡素な造りを心掛けました。


 襖の欄間の吊り束。言われないと気がつかないくらいのさりげないデザイン。


 照明はヤマギワの村野藤吾デザインのものを採用しました。



 水屋からキッチンにアクセスできるように、廻れるプランになっています。


徳田英和
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月見台のある家

月見台のある家は、郊外ののどかな敷地に佇むご夫婦のための住まい。

ご両親の母屋の奥のスモモ・ブドウ畑を一部切り開き建てられました。
クライアントの一番のご要望は月見台のある家にしたいということでした。
この地は街の喧噪から離れた集落で、夜は満天の星空が眺められる贅沢な地域です。
そこで、建物の真ん中に4帖半の大きさの月見台を配置するところから設計をスタートしました。




建物プランはシンプルな長方形の平屋で、素直に切妻屋根を架けました。
外観はジョリパット校倉の外壁、南面のみ木製製作建具、その他の面は予算の関係でペアガラスのアルミサッシュを採用しています。
屋根はガルバリウム鋼板瓦棒葺き。この地域は積雪も多いので、樋は玄関と居間から月見台に出る窓の前だけにタニタ・スタンダードを取り付け、他は地面に雨落しを設け浸透させています。

クライアントは当初蓄熱暖房機を設置したいと要望されましたが、国内でも有数の晴天率、日射量に恵まれた地域でもあり、それを利用しない手はないと、私がこれまでに手掛けてきた空気集熱式ソーラーの説明を重ね、「そよ風」を採用することになりました。


月見台のある家
設計:徳田英和設計事務所
施工:エスエーホーム





徳田英和
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